「救急車で大学病院へ、軽症でも8割で追加料金徴収せず」朝日新聞DIGITAL

 紹介状なしで大病院を受診した患者が軽症だった場合にとられる追加料金について、救急車を利用すれば支払わずにすむ例が多数あることが、朝日新聞の調査で分かった。大学病院を中心とした全国85の特定機能病院の8割以上が、軽症の救急搬送患者からとっていなかった。このままでは救急車の不適正利用が増えると心配する声もあがる。

 「診察料と別に料金がかかります」。紹介状を持たずに、中部地方のある大学病院を受診しようとした患者は窓口で言われた。直後、病院の敷地を出て救急車を呼んだ。救急隊員に付き添われて再来院すると救急患者扱いとなり、負担は求められなかったという。

  85病院に、救急車で運ばれた軽症患者から選定療養費とよばれる定額を徴収しているかを聞いた。回答した84病院中、88%の74病院がとっていなかった。

  選定療養費は、軽症患者を地域の診療所や中小病院へ、重症者や専門治療が必要な人は大病院へ受診を促そうとするもの。特定機能病院と、紹介患者を中心に診療する一定規模以上の病院を紹介状なしで受診すると、初診時には5千円以上を徴収することが2016年に義務付けられた。

  義務化後の厚生労働省の専門家会議で「かぜのため受診しても救急だと徴収されないので、(主に重症患者を診る)急性期病院で軽症の救急患者が増えている」と問題視する意見が出ていた。これを受けて厚労省は今年3月、「単に軽症の患者が救急車で来院し受診した場合は徴収対象」とする事務連絡を出した。

  軽症の救急患者からとっていない理由は様々だ。「救急車で来る患者は病院を選んでくるわけではない」(弘前大)、「軽症か否かを判断する体制が整っていない」(自治医科大)、「本来はとることが望ましいが、一律の基準では難しい」(埼玉医科大)などの回答があった。

  その一方、10病院は徴収していると答えた。軽症かを医師が判断していることが多い。東京医科歯科大病院は「地域の皆様に安全で質の高い救急医療を提供するため」と説明。和歌山県立医科大病院は厚労省の事務連絡の通りにとっているという。救急車をタクシー代わりにする不適正利用については徴収するという病院もあった。

 日本救急医学会の横田裕行代表理事は「軽症かどうかの判断は患者にはできない。結果的に軽症であっても救急車を呼んではいけないということではない」とする一方、「救急患者の受け入れには限りがある。タクシー代わりのような救急車の不適正利用は減らしていかなければならない」と話している。(姫野直行)

                ※朝日新聞DIGITALの記事をそのまま掲載しています。

 

2018年11月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : souzokunet.jp